自分の内側で「やる気」を自ら燃え続けさせるには

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自分の内側で「やる気」を自ら燃え続けさせるには

2013-06-22

企業の現場にいるチームリーダー、マネージャー等の管理職は、チームメンバーの「仕事に対するやる気」を高めて貰うために、日々研究をし、実践をし、工夫を凝らしています。

 

 一昔前は、「カツ」を入れる、「シメる」、といった上からの締め付けによる管理が主流でした。

 

私はかつて日本の某都市銀行の香港支店で働いていましたが、その当時の上司などは、「最近たるんでるので、昨日ちょっと締めたのたが、締めすぎた」などと、自分の同期に電話をかけて話していたことを思い出します。そんな上司の行為こそが、我々平部員のモチベーションを下げる要因になっていたのだが、そんなことは上司は知る由もありません。

 

それはいいとして、その上司の締め方が、とてつもなく凄まじかったのです。自分のデスクの前に夜8時位から立たせ、延々夜中の3時位まで説教をし続けるのです。私は、「女性」だったので、その締め上げを免れていましたが、残業が終わった10時過ぎに、立ちっパで怒られ続けている同僚を横目で見ながら帰宅するのは、忍びなかったものです。上司の言う「シメル」は、「締める」ではなく「絞める」だと思っていた位です。

 

 少し前は、こういった「怖れ」や「威圧」がモチベーションを上げるのに有効、或いは、そうやって威圧を与えなければ部下は働かないもの、という認識が社会にあったように思います。これは、そんなに前のことではありません。高度成長期の話ではなく、バブルが弾けた後の1990年代の話です。

 翻って、現在。そんな管理手法はめっきり姿を消したようですが、代わりに、「褒めて」モチベーションを上げる、「褒め」管理が流行しているように思います。

 

「君は素晴らしいね。その調子でこれからも頑張ってくれ」といった具合です。

 

 上げて上げて、喜んで貰って、頑張ってもらう。これは、人間の持つ承認要求に応える形でのモチベーションアップ手法の一つで、それはそれで有効です。が、これには、欠点もあります。それは、常に承認し続けなければならないこと。また、部下が結果を出せないで苦しんでいる時などには、この手法は使えないばかりか、逆効果になる可能性もあります。

 

 結果が出せない時に、褒められても、そうやってモチベーションを上げようとしているのだな、とバレバレです。それに、下向きになっている時に良い言葉を投げかけられても、心に響くどころか、逆に落としてしまうことにもなりかねません。

 

このサイトを覗いて頂いているアンテナの高い管理職の方々は、ご存知の方も多いと思いますが、最近では、人材を人財と呼んで、「費用」扱いしないという考え方が出て来ています。費用扱いしないということは、人材を「リソース=資源」として扱わないということです。増やしたり減らしたりする投入資源としてではなく、会社の財産として、大切に扱う、ということです。

 

欧米などでも株主に向いた経営ではなく、社員を大切に扱う経営が脚光を浴びてきています。社員が幸せであれば、社員は自ずと顧客を大切にし、会社のファンが増え売上増に結びつき、ひいては株主の為になる、というのが理論のベースとなっています。

 

それを唱える学者の一人に、ヘンリー・ミンツバーグ教授という方がいます。ミンツバーグ教授は、日本ではあまり知られていませんが、欧米ではピーター・ドラッカーと並び称される経営学の大家です。 彼は、この3月に日本を訪れ、講演をしています。私も講演を拝聴しましたが、彼の経営理論がダイヤモンド・オンラインで紹介されているので、そこから要点を抜粋したいと思います。

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彼の主張は、マネジメントとは人間の能力をシステムに適用することで、システムを人に適用することではないという基本的な信念を軸に展開される。そして、やる気とは、自分が大切に扱われているという気持ち、つまり自己や周囲に対する肯定感や信頼感といった気持ち、心理的作用から起こるものとし、コミュニティシップ経営なるものを提唱する。

 彼は論文「『コミュニティシップ』経営論」(ダイヤモンド・ハーバードビジネスレビュー/2009年11月号)において、「コミュニティは、仕事や同僚、そして自分たちの居場所(それは地理的な意味だけではなく、様々な意味において)を大切にし、この気持ちによってやる気が湧いてくるところである」と述べている。

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自分の居場所がある、とは、すなわち、自分の<ミッション>が明確であることに他なりません。自らのミッションを明確に持っている人は、ミッションが明確な企業同様、ブレがなく、方向性がはっきりとしており、強いのです。ミッションとは、すなわち、社会での役割のことです。自らの役割を社会性を持って強く“意識”した時、それは“使命”すなわち、<ミッション>になります。

 

実際、クライアントさんと接していて、自分の人生におけるミッションを発見すると、そのサインが目に見える形で現れます。瞳の奥がキラっと光り、心の底から納得したような、長年探していたものが目の前に現れたような安堵感と喜びに包まれた表情をされます。

 

そして、現在携わっている仕事や個人で取り組んでるボランティアや趣味などがミッションと深くリンクしていると気づいた時、瞳の奥に、第二の光が現れます。自分の任務、使命を全うすることが、自分の存在価値を立証する、高めることになるのだと気づいた瞬間です。自己重要感、自己信頼感が一気に増すのです。こうなると、任務全うのためのアイデアが沢山浮かぶようで、

 

 「私には、やることが沢山あります」

 

「こうしてはいられないのです」

 

「早く社に帰って、色々アイデアを具体化して取り組みたい」

 

 といった言葉が次々と飛び出してきます。

 

自分の<ミッション>への気づきが、コミットへと変容した瞬間です。あとは放っておいても、内側からやる気がみなぎり、周囲を巻き込み、どんどんと仕事を創造し、こなして行きます。与えられた仕事をするのではなく、自分から仕事を見出し、創りだし、こなして行くようになります。ミンツバーグ教授の言うとおり、

 

「マネジメントを実践していくには、理論だけでなく、人の気持ち、感情を土台とした周囲とのつながりがとても重要」なのです。そして、

 

「心の持ちようの変化は、個々の心の中に起こることだけれども、それが対話の場に集ったマネジャーそれぞれに同時進行で起きたとき、組織として大きな力を発揮」します。

 

 企業として、中間管理職のそれぞれが<ミッション>に目覚めることほど、強いことはないでしょう。なにしろ、歯車のそれぞれが、自ら動き出すのですから。

 

 私は、「結果が全て」である外資の金融機関で20年仕事をしてきた中で、使命感<ミッション>を持って仕事に取り組むことほど強いものはないことを実感し、これこそが、自分でも認識していなかった、自分の中に眠る最高の可能性を引き出し、最高のパフォーマンスを発揮するために必要なことだと、確信を得ました。

 

 一つの部門を任されてからは、一人一人の部員が、携わる仕事に自分独自の使命感を見出せるように、仕事の割り振りを考えてきました。その人が持つ、相対的な「強み」が最大限に発揮できる仕事を割り振り、

 

「あなたにしかこの仕事はできない」

 

「あなたの人生にとっても、この仕事に携わることは非常に重要な意味がある」

 

を肝に銘じてもらうことに、労力と時間を費やしました。

 

それが腑に落ちると、人は驚くような仕事をします。仕事の中に使命感<ミッション>を見出している人は、周囲や本人さえもが思ってもみなかったような加速度的な成長を遂げ、考えてもみなかったような結果を打ち出してくるのです。

この理由の第一には、仕事の中に<ミッション>を見出している人は、自己重要感が高く、自信に溢れ、文字通り使命感に溢れ、幸せで心が満ち足りている点が挙げられます。幸せな気持ちで物事に取り組んだ結果もたらされるものは、我慢して嫌々取り組んだ場合とは大きな差が出ることは、周知の通りでしょう。

 

第二に、仕事の中に<ミッション>を見出している人には、迷いがありません。自分の<ミッション>は、この自分が果たさなければ、誰も果たす事ができない、との強い確信があるため、何か困難に出会ったり失敗した時なども、挫折、落ち込み、凹み、といった方向にマインドが向かわず、その段階を飛ばして、何が最善の策なのかを探して脳がプロアクティブに動くことになります。この状態にある人は、「失敗」の報告と同時に「こう対応しました」或は、「こう対応します」という対応策、解決策を持ってきます。しかも、それが早い。

 

第三に、多くの協力者を引き寄せることになり、運をも見方につけるようになります。ミッションに生きていると、内面からの輝きが違ってきて、直感やインスピレーションなども湧いてくるようになります。それが必要とする協力者を惹き付け、自らが必要とする潮流をも創りだす動きができるようになるのです。

 

こういった経験を通して、私が学んだことは、

 

1)メンタルとは、強くするものではないということ。使命感<ミッション>を持っていれば、メンタルが強くなるのです。

 

2)モチベーションは高めるものではないということ。使命感<ミッション>を持っていれば、モチベーションが高まるのです。

 

それがわかってから、私は、部員全員が「仕事の中に自分だけの使命感<ミッション>を見出していること」をマネジメントの柱とする管理手法に切り替えました。個々人のパフォーマンスが劇的に上がったのは、言うまでもありません。

 

 では、<ミッション>を明確に知るには、どうしたら良いのでしょうか。実は、この理論を唱える学者や経営者は、世の中に数多く存在します。ですが、方法論まで確立しているものは少なく、その中で効果があるものとなると、本当に極僅かになります。

 

ミッションを知るための第一歩は、自分のコアな部分が最も大切にしている、本当の自分の噓偽りのない「価値観」を知ることです。私たち、特に40代以上は、社会や親の価値観が画一的であった時代に育ったため、大半が自分自身の価値観というものを認識すらしていない、或いは、ずっと心の奥に押し込めてこれまで生きて来ました。

 

会社の価値観、親の価値観を自分の価値観と思い込んで就職、結婚という人生の重要イベントの決断をしてきたため、仕事に必要以上のストレスを感じ、病気になったり心が病んだり….。それでも働き続ける為に、メンタル面のケアが必要になり….。

 

心が嫌だと言っている仕事だから、ワークライフバランスが必要になるのです。心が喜ぶ仕事なら、オンとオフの線引きなど必要なくなるでしょうし、引こうとしても引けなくなるはずです。

 

一日一日の日常、その連続が、人生です。

 

他人の価値観が反映された日常を送っているなら、他人の価値観を生きる人生になります。

 

会社の価値観は、会社の価値観。

 

親の価値観は親の価値観。

 

自分には、自分の価値観、もっと言うと、世界観があるはずです。

 

自分は、何を信念に、何を善しとし、何に美を感じ、何をしようとして、生きているのか。

 

そういった、自分の世界観、自分の軸。

 

自分の今の人生、日常は、それが反映されたものなのか。

 

そう自分自身に問うてみること、

 

そして、答えがノーならば、自らの価値観に従い、<ミッション>に生きる生き方に修正すること

 

それが自らの内側でやる気を燃え続けさせ、結果を出すための第一歩であると考えます。

 

ミッション・ミッケ 代表
ビジネスパフォーマンス・コーチ/トレーナー
高衣 紗彩


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