リーダーシップを発揮する社員(2/2):リーダーとやる気

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2013-06-23

前回の投稿『リーダーシップを発揮する社員(1):個の力』に関連して、今回は「リーダーシップ」について考察する。

日本ではリーダーというと、部や課、プロジェクトチームなどの特定のグループ単位の中で、職位がもっとも上位の者が務めることが多い。

なのでリーダーとは役職の順位によって決まる、役職の代替概念ととらえてよい。

また日本では年齢が役職に就く基準として未だにあるため、若いスタッフがリーダーとみなされることは少ない。

そして、グループではリーダーがたいてい1人と決まっており、それ以外はサブリーダーがいたとしても、ほぼ名ばかりで、1人のリーダー以外は、フォロワーとしてリーダーの指図に従うという構図だ。

若いスタッフが、リーダーの決定したことに反論したり、覆すような意見/アイデアを述べることは稀であり、そういうことをしてはならないという暗黙の了解さえあると言ってよいだろう。

したがって、リーダーシップは、一人のリーダーが発揮するものであり、それ以外の人にはもとめられない、関係のないスキルであるという認識が組織内にある。

リーダーになるにしても、ある日突然、昇進を機にリーダーシップを発揮することをもとめられる。それまで不要とされ、訓練されてもいなければ経験も積んでいないのにである。

さて、筆者は「日本では」と書いた。

なぜかと言えば、筆者はアメリカの大手経営コンサルティング会社の東京事務所で3年、アメリカ本社に5年務めた経験、そしてまた日米の合弁会社に2年務めた経験があり、働くスタイル/意識の違いを実際に認識しているからだ。

コンサルティング会社といえば、さまざまな職種の中でも、もっともプロフェッショナル意識の強い個の集団である。

しかしながら、同じコンサルティングという職業であっても、日本とアメリカでは働く者にもとめられることに明確な差がある。

その違いとはひとえに「リーダーシップ」である。

外資系コンサルティング会社とはいえ、日本の事務所では、前述したような風潮が他の業界と比較するとだいぶ薄いが、まだ確かに残っているのが実情だ。スタッフコンサルタントから見れば、パートナーという職位にある人は上長であり、ちょっと逆らえない雰囲氣があるのだ。

何にもましてスタッフにリーダーシップをもとめるようなことは少ないように思う。

これがアメリカの事務所になると、スタッフコンサルタントであってもプロジェクトチームの中でリーダーシップの発揮を強くもとめられる。

プロジェクトリーダーは確かにいるのだが、プロジェクトチームのメンバーは、全員各自がリーダーであり、フォロワーでいようとすれば、まず評価されない。

年収にも影響するし、最悪の場合、職そものの安全をおびやかされかねないのだ。

なので否応無しに、職位に関係なく働くすべての人がリーダーという意識を持って、リーダーシップを発揮することがもとめられるわけだ。

さて、ここまでの話を聞いて「それはコンサルティング会社のことでしょ。自分の会社はメーカーだから関係ないよ」と思う読者もいることだろう。

しかし、はたしてそうだろうか?

今や事業環境はどんどん変化し、インターネットによって事業の展開、運営スピードは益々速くなっており、意思決定のスピードアップがもとめられる時代である。

また、グローバル化の進展によって、海外企業との取引が増加し、従業員も日本国籍の人ばかりとは限らない時代に入りつつある。既にそれを実体験として認識している読者もいるだろう。

これによる影響は一部の企業だけにとどまらず、例え地方の零細企業であっても逃れることはできないことを認識することが賢明だ。

なぜなら、遅かれ早かれ、消費者/顧客の誰もが、そうしたスピード感に慣れ、それを要求するようになるのだから。

そして何よりもリーダーシップは、本「やる研レポート」のテーマである「社員のやる気」と密接に関係することを認識することだ。

チームの中で、リーダーとなる人の要件は、そのチームの目的/目標に対してもっともコミットしている、やる気の高い人であることに異論は無かろう。

つまり、チームの目標を達成することが、その人の価値観に合致している人が必然的にリーダーになるのだ。

そして、ここが肝心なのがリーダーの定義である。

リーダーとは、仕事への責任感が強く、目標を明確に定め、目標の達成意欲が高く、自発的/積極的に率先して働き、仕事の遂行のために必要なリソースを動かし、意思決定する者である。

さらに加えるなら、自分が何をしたいか、何をもとめているかを、一緒に仕事をする人たちに伝える者である。

これらの1つ1つの要件をみて、働く者にとって当てはまらないものが1つでもあるだろうか?

全社員がその職位に関係なく、仕事への責任感、明確な仕事の目標、目標達成へのコミットメント、自発的に働くことは当然である。

では、仕事の遂行のために必要なリソースを動かすことについてはどうか?

リソースとは、自分が持つ資源(情報/知識、人脈、スキル、お金/予算)のことであり、これらはどの職位の社員であろうとすべて既に持っているか、(もとめれば)持つことができるものだ。

例えそれが新入社員であろうと、課やプロジェクトチームに配属されたとき、自分を中心において、周りにあるリソースを見る目を持てばよい。

すると、経験のある上長や予算に影響力を持つ役職の人、プロジェクト遂行に必要な知識に詳しい先輩、事務処理能力のある同僚、社外の知人、取引先など、自分が活用できるリソースに囲まれていることに氣づくはずだ。

つまり、どんな規模のプロジェクト案件であろうと、またどんな立場で参加するのであろうと、自分がやるべき仕事の目標をしっかりと定め、目標達成のために自分が(潜在的に)使えるリソースを自分を中心として配置し、いかに活用するかを考えるのである。

自分の仕事の目的を遂行するために、上司には何をしてもらう必要がある。そのために上司にどのように働きかけるかを考えるのだ。

具体的には、プロジェクトにおける自分の仕事の目標を中心におく。それがこのプロジェクトにおける自分がもっとも優先する最高位の価値観となる。

自分の周りにプロジェクトの遂行に必要なリソース(社長、プロジェクトリーダー、予算に影響力を持つ管理職、知識豊富な先輩スタッフ、同僚、取引先の担当者等)を配置し、彼らに何をしてもらうと仕事がスムースに遂行できるか、そして彼らに協力してもらうために、自分は彼らに何を提供するかを考えるのだ。

これはサッカーに例えれば、わかりやすいだろう。
 
サッカーチームには監督がいて、キャプテン、そして選手がいる。監督はチームのフォーメーションや大きな戦略を与える。会社で言えば社長だ。キャプテンは、実際にプレイするフィールドの中で、チームに試合に勝つ目標に向かって選手達を鼓舞したり、状況に応じた指示を出す。
 
 
では、各選手は、全員が言われた通りにフォローするだけだろうか?
 
もちろん、そんなことはない。それぞれのポジションの中で、選手達は各自の目標(得点する、ゲームを組み立てる、失点を阻止する等)を持っている。そして、その目標を実現するために、周りの選手に動いてもらうようポジションを指図したりパスを要求する。
 
 
このようにサッカーでは、選手一人ひとりが自分のポジションにおいてリーダーシップを発揮するリーダーなのだ。目標を明確に定めて、そのために必要な周りの選手を動かしながら自発的に動き、状況を見ながら適切な意思決定をするのだ。
 
サッカーは、監督から選手を含め全員がリーダーとなってリーダーシップを発揮する。そうでないと勝利を掴むことはできない。
 
 
これからの企業は、サッカーのようにめまぐるしく状況が変わる中、社員全員が高い意識を持ち意思決定できるリーダーとなる組織にならなければならない。
 
 
当然ながら、その組織では、やる気を持った社員が働いているのだ。
 
 
岩元貴久





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